冷たい手
「本当に、助かりました。ありがとうございます。」

ダイチは軽くうなずくと、まだキーボードに手をおく。そして、ゆっくりと打ち込んでいく。

「帰る家がないのなら… え?」
ダイチは『一緒に住みませんか?』と打ち込んだ。
「そんな、私、ご迷惑ですよ。」

『迷惑じゃありませんよ。そうだ、住み込みで働くってことにしましょう?』

「住み…込み。 でも、何もできません。」

『居るだけで良いよ。僕の代わりに秘書をしてほしい。』

「秘書…?」

『日給は欲しいだけ。他にも、欲しいものは全てあげるよ。』

「欲しいものは… 全て? どうしてそこまで?」

ミカが困惑の表情を浮かべ、ダイチを見る。
ダイチはパソコンから離れ、棚の方へ向かっていた。

棚から何かを取り出したダイチが、ポケットから手帳を出し、何かを書いてミカに見せる。
「ひとりでつまらないから?」

ミカは手帳の文字を読んだ。ダイチは笑顔でうなずく。
そして手帳に書き加える。

「だから、いるだけで助かる。」

読み上げたミカに、もう一度うなずくダイチ。
そして、棚から次に財布を出す。
指で外を指さし、部屋から出る。
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