【短編】穴
「おまえって、ホント、馬鹿だよなぁ」


振り向きざまに、軽くデコピンされた。 


「…っ痛いなぁ!お兄ちゃんがズルイんだよ。すぐにいなくなっちゃうから」


「当たり前だろ!あんな酔っ払いたちの話、まともに聞いていられるかよ?みんな酒臭ぇし」


「そうだけどさ…。お父さんもお母さんも大変だよね。まだ、あそこにいるもん」


お父さんとお母さんは、まだあの賑やかな席の真ん中にいた。


酒に弱いお父さんは、勧められるがまま飲んでいたからすでに酔い潰れていた。


でも、それ以上に気の毒なのが、おじいちゃんとおばあちゃんだ。


親戚とはいえ、お客さまが来ているからあれやこれやと接待しなければならない。


それでなくても、私たち家族が泊まりに来ているから気を遣ってるだろうし…。


そんな話をしながら、お兄ちゃんと階段を上がった。


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