愛しき日々へ
「15歳…、今年で?」
「いえ、今年16。」
「そ、うか…。お父さんは?
見たところそれらしい人はいないみたいだけど…。」
「母はシングルマザーでしたから。
俺も父親のことは母からはなにも聞いていません。」
母さんは一度も父親の話はしなかった。
どんな人であったかも、何をしている人間なのかも。
だから、俺も何も聞かなかった。
父親がいなくても母さんがそれ以上に愛してくれたから寂しくもなかったし。
あ、今なんか自分で自分の地雷踏んだかもしれない。
父親のことを知らないと言ってしまえば自分が1人だと嫌でも再確認してしまった。
あぁ…いやだ。
「……そうか、ごめんね。」
「いえ。」
そういって目線を下げる。
その日は結局、涙はでなかった。