心を全部奪って
「じゃあ私、次で降りるので…」


思わずハッと彼女の横顔を見つめた。


「あ、あぁ…」


やべ。


どうしよう。


帰したくないんだけど…。


「あの、さ。朝倉。

明日の予定は…?」


「明日?

明日は、大学時代の友達と会うの」


「そうなんだ。

じゃあ、明後日は…?」


「え…?」


俺の方を見る彼女。


澄んだ綺麗な瞳と目が合って、ドキッと心臓が跳ねた。


「良かったら。

また…、海に行かないか…?」


こんなに頻繁に誘うのは、


まずいのかな…。


「水族館とかどう?

俺、結構好きなんだけど…」


「水族館…?

水族館は、私も…好きだよ…」


あぁ…。


どうしてこの子って、いちいち顔を真っ赤にさせるんだろう。


俺だけを好きなんじゃないかって、


勘違いしそうになる。


だからつい、強引になってしまうんだ。


「じゃあ日曜日。

アパートに迎えに行く」


俺の言葉に、一瞬動きが止まったけど。


朝倉はゆっくりと頷いた。


そんな彼女を見ながら、俺は心の中でガッツポーズをした。

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