心を全部奪って
「こんな場所に呼び出して、あらためて話って何かな…?」


両肘をテーブルについて、私をじっと見つめる工藤さん。


私はゴクリと喉を鳴らした。


「工藤さん、あのね…。

私…」


どうしよう。


声と指先がブルブル震えてしまう。


工藤さんに悟られないように、ぎゅっと自分の手を握る。


落ち着いて、ひまり。


ちゃんと言えるから…。


「ひまり」


「はい…」


「もしかして…、


俺と別れたい…?」


工藤さんの方から言われて、


ドキッと心臓が大きく跳ね上がった。


工藤さんの顔をじっと見つめる。


大好きだった工藤さんの顔を。


その顔を見つめながら、


私はゆっくりと頷いた。

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