心を全部奪って
「あのな、拓海。

離婚届なんてさ、ただの紙切れなんだ。

役所に行けば簡単に入手出来るし。

自分のサインだけ書いて、彼女に見せたってことも考えられないか?」


「え?それって…」


「うん。

彼女を繋ぎ止めるために、わざと演出したとも考えられる」


「ま、まじ?」


あの工藤課長が、そこまでする?


「彼女に本気だって言うけどさ、

まだ奥さんと別れてないんだろう?

だとしたら、以前と何も状況は変わってないじゃないか」


「だ、だよな。

確かにそうだ」


「離婚届っていう紙切れがそこにあっただけ。


離婚する意思がある保証なんか、どこにもないよ」

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