心を全部奪って
「-というわけで、だ」


俺がそう言うと、ひまりの身体がビクンと揺れた。


ビビってやがんな。


そんなところが、たまらなく可愛い。


「ベッドに行こうか」


わざと耳元で囁いてみる。


そんなこと言われて、うんって言えるはずないのにな。


身体を起こして、俺から離れようとするひまり。


逃げ腰になると、ますますいじめたくなる悪い俺。


「朝まで寝かさないから」


明日も会社だから、ほどほどにするつもりだけど。


あえてそんなことを言ってみたりして。


ひまり、顔が真っ赤だ。


今にも泣きそうだから、これくらいにしておこうか。


「嘘だよ。おいで」


ひまりの腕を引いて、ぎゅっと抱きしめる。


「大丈夫。

何も心配するな。

黙って俺だけ感じてればいい…」


瞳に涙をいっぱい溜めて、俺をじっと見つめるひまり。


ひまりがゆっくり頷くのを確認すると。


俺は彼女の後頭部を片手で引き寄せて、


ちょっぴり強引にキスをした。


戸惑いつつも俺に応じるひまり。


しばらくそのまま、熱く深いキスを交わした。

< 331 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop