心を全部奪って
そんな私の肩をそっと抱き寄せる霧島さん。


慌てて離れようとしたけど、グッと強く肩を抱かれた。


「いいから、前見て」


「で、でも…っ」


「すげー綺麗だろ?」


霧島さんの言うとおりで。


ここから見る夜景は、本当に本当に綺麗だった。


「東京はこんなに広いのに、

沢山の人がいるのに。

あんたはあの狭いアパートで、

工藤課長が来るのを

ただ待ってるんだろう?」


「…………」


そうだよ。


それだけが私の唯一の楽しみで、希望で…。


それだけのために、生きてる……。


バカだよね…?


わかってるんだ。


わかってるんだけど……。

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