心を全部奪って
「次は、いつ来る…?」


この瞬間が一番嫌い。


明日また会社で会えるってわかっていても、


触れ合える距離にいるわけじゃないもの。


「次は、金曜の夜にしよう。

仕事を早めに切り上げて、会いに来るから」


「ん。わかった…」


「そんな顔するなよ。

綺麗な顔が台無しだ」


そう言って、横たわる私に覆い被さりキスをする工藤さん。


熱い舌が絡み合って、再び濡れ出す私の下半身。


工藤さんのワイシャツに、行かないでと言わんばかりにしがみつく。


だけど工藤さんは、仔猫をなだめるように私の頬を撫でて、


おでこにチュッと優しいキスを落とした。


「愛してるよ、ひまり」


にっこり笑って立ち上がり、スーツの上着に腕を通す工藤さん。


ずるいよ、工藤さん。


それを言われたら、私はいい子にして待っているしかないのに。


「ゆっくり休んで」


足音が次第に遠ざかり、パタンと玄関が閉まる音がした。


その途端、


急激に部屋が静寂に包まれていった。

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