本当の私と恋
「美咲ちゃん…仕事が忙しくない時期なんて俺にはないと思う」


霧島さんの言っていることがすぐには理解できなかったけど、さっきの話だと思った。
きっと、常に忙しいのだと思うけど、わざわざなんでそんなことを言うのだろう…


『そうですか。すいません、忙しくない時にでもなんてさっきは言ってしまって。
 では、何かの機会でもあったらお会いしましょうね』


「そうじゃなくて…忙しくない時にではなくて、忙しい時期でも…会いたいよ。
 俺は美咲ちゃんに…」


いきなり直球を投げられた私はなんて言葉を紡いだら良いのか困ってしまった…
どんな言葉を言えばいいのだろうか。


「美咲ちゃんはさっ。俺とはやっぱりもう会いたくない?」


会いたいか会いたくないかと聞かれれば、会いたい…かな?
でも私のために忙しい中 時間を割くまでは…


「美咲ちゃんが迷惑なら…連絡しないから。
 もし、美咲ちゃんが少しでも…一ミリでも会いたいと思ってくれるなら
 美咲ちゃんから電話してきて。
 俺からはしないから。

 たださっ。俺の仕事が忙しいんじゃないかとかそんな心配は一切しないで。
 美咲ちゃんの気持ちだけで電話してほしいから。」


何だか、霧島さんの事を何も知らない私としては、どうこたえてよいのやら…
でも、この言葉の意味は…違う違う。そんなことない。私の妄想だ。

霧島さんの社交辞令を真に受けたらいけない。


『ありがとうございます。
 では…』

私は無難な言葉を発して車を降りた。
車を降り振り返ってみた霧島さんの表情は今まで見たことのない何だか…
落胆したような感じだった。

そう思ったけど、私は車に背を向けて歩きだしていた。
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