異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 バージュモデルの発表から三年後、フェティが四十歳になったとき、ランシュから同居の申し出があった。というより、部屋が空いているなら住まわせて欲しいというものだ。

 というのも、八歳になるランシュの義理の妹にちょっと困っていたらしい。妹はリズ同様ロボットや機械が大好きで、そのせいかロボット作り専門の兄にべったりのお兄ちゃん子だ。
 小さい頃はそれでもよかったが、学校に行くようになっても外に友達を作ろうとしない。
 小さい頃から何度も聞いている「大きくなったらお兄ちゃんと結婚する」というほほえましい戯れ言が、いい加減戯れ言ですませられなくなってきた気がして両親も憂慮していた。
 実際に血は繋がっていないから、クランベールの法律的には結婚が可能なのだ。
 妹と距離を置くため家を出たいというのが表向きの理由だった。
 リズは否定したけど、本当のところはふたりとも少なからず恋愛感情を抱いていたのではないだろうか。
 なにしろランシュが引っ越してくる前日のフェティは嬉しそうなのだ。そしてこの日の日記はなんだか意味深でもある。


 明日ランシュがやってくる。そしてこれからずっとランシュと一緒の生活が始まる。
 十年前の戯れに交わした約束を、ランシュが覚えているとは思わなかった。十年経っても私がひとりだったら、ランシュが恋人になってくれるって。
 ひとりでいてよかったのかな? 恋人はともかく、この先もずっとランシュと一緒にいられるなら。きっと毎日楽しく過ごせると思う。
 明日、なにか大事な話があるって言ってたけどなんだろう? 


 オレも気になる。
 ところが翌日の日記は書かれていなかった。入局からこれまで一日もかかすことなく書かれていたフェティの日記がこの日を境に所々日付が飛んでいるのだ。
 そしてランシュの「大事な話」についての記述はその後も登場することはなかった。

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