異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 なんだ。シャスに限らず、みんな班長大好きなんじゃないか。部下に信頼されて慕われてる上司って、日本の会社組織じゃ、絶滅危惧種だぞ。班長すげぇ。
 嫌われてるから距離を置いてただけで、オレも別に班長を嫌いなわけじゃない。オレを含めたロボットに対する態度はアレだけど、仕事はできる人みたいだし。

 新しい制服を受け取り改めて礼を言うと、シャスは軽く手を挙げて出口に向かった。そのまま帰るのかと思ったら、途中で何か思い出したのか、立ち止まって振り返る。

「そういえば、鑑識のロボット解析係から報告があったんだけど、あの立てこもりロボット、最新の通信記録が科学技術局になってたらしい」

 科学技術局……。動き始めたってことか。
 いや待て。一連の盗難事件も、もしかして科学技術局の仕業とか?
 てっきり科学技術局より先に人格形成プログラムのソースコードを手に入れようとする奴の仕業かと思ってたけど。
 しかし国家機関が犯罪に関与しているとなると、色々面倒くさそうだな。
 リズは気づいただろうか。様子を窺いながら彼女と顔を見合わせる。
 少し動揺しているようだが、生体反応からそれはうかがえない。まだあの日記を見てないから、それほど危機感は感じてないのか。

 オレはシャスに視線を戻して尋ねた。

「オレの登録情報が科学技術局に送信されたってこと?」
「そうだろうな。マスターは科学技術局のロボット工学部門主任研究者になってるし」
「あのロボットは科学技術局のものだったの?」

 今頃になってリズが驚いたように口を挟む。

「今、問い合わせてるらしい」

 シャスが答えたと同時に、通信が入った。リズはコンピュータの画面を切り替えて応答する。画面には二課長の顔が映されていた。

「科学技術局の方が謝罪にきている。君にも同席してもらいたい。それから、先方の希望で、シーナもぜひとのことだ」

 やけにタイミングがよすぎる。しかもオレになんの用だ。

< 142 / 285 >

この作品をシェア

pagetop