異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました



 耳に押し当てた受信機から聞こえる音声に、グリュデはクッとのどを鳴らして愉快そうに言う。

「うーん。やはり私はシーナに嫌われてるみたいだねぇ」

 局長室の大きな机に頬杖をついて、グリュデはクスクス笑った。その傍らに立った局長秘書のヴァラン=ドローは涼しげなアイスブルーの瞳で冷ややかに見下ろしながら告げる。

「盗み聞きなど、あまりいい趣味とは言えませんね」
「趣味でやってるわけじゃないよ。時間がないんだから手段は選んでいられない」
「とはいえ、犯罪ですよ、それ。しかも警察局の内部を盗聴なんて、ばれたら面倒なことになります」
「そう簡単にはばれないさ。科学の最先端をいく科学技術局を見くびってはいけないよ」

 ニヤリとイタズラっぽい笑みを浮かべるグリュデを見下ろして、ヴァランはひとつため息をついた。

「別に科学技術局を見くびっているわけではありません」
「そうか。とにかくシーナに取り付けた盗聴器は砂粒ほどの大きさで、ロボットのセンサも遮断するから見つかる心配はまずない。ただ小さすぎて内蔵バッテリが数時間しかもたないのが難点なんだけどね」
「そうですか。リスクに見合うだけの有益な情報は得られましたか?」

 グリュデは少し眉を寄せて腕を組む。

「はっきりとしたことはわからないが、なにやら意味深な会話をしていたなぁ。やはりシーナはただのロボットじゃないみたいだ。制作者がそう言ってたしね」
「制作者はバージュ博士と縁(ゆかり)のある者でしたね」
「今年制作なのに九十年前の技術が使われているシーナはそれだけでも怪しい。おまけに会話相手によって言葉遣いが変わったり、冗談を言ったり、今年制作とは思えないほど高度な会話能力だ」
「運動能力、耐久性共にバージュモデルの中でも最高クラスです」
「警察局に預けておくのはもったいないね」
「元々警察局のものですが、なにか企んでおいでですか?」
「ちょっとね」

 グリュデはニヤリと笑い、再び受信機を耳に押し当てた。


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