異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました



 痛みがないからか、他人事のように死を覚悟しかけたとき、車の扉が開いた。
 班長が車を降りてオレの方に大股で歩いてくる。

 いつも通り不愉快そうな表情で腰のホルスターから素早く銃を抜いた。指揮官の班長が最前線に立つのは初めて見る。

 いやいやいやいや、最前線に立ったらまずいだろう。オレが護衛の役に立てないのに、班長を狙ってた犯人の前に本人が出てくるなんて!

 絶対命令は班長ひとりの命よりも、より多くの人の命を優先しているらしい。その証拠にオレは相変わらず猫を抱きしめたまま動けない。

 頼むよ、班長。車に戻ってくれ。この間、せっかく守った命なんだから。

 無表情なまま祈るオレの横で、班長の足は止まった。顔が動かせないので班長が何をしているのかは見えない。だが引き金を引いたのだろう。
 ビシュッと音がして、微かな光を感知する。
 クランベールの銃は光弾銃なので、そんなに大きな音はしない。もちろん班長の銃も対ロボット専用の銃だ。

 いったい、なにがどうなっているのか、動けないオレにはさっぱりわからない。
 だが班長が倒れたりしないし、背中への攻撃も止んだところを見ると、あいつを仕止めたのかな。
 てことは、オレの命も助かったってことか。相変わらず視界は警告モードのままだけど。

 ちぇー。班長の勇姿見たかったなぁ。

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