異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 くそっ、また絶対命令に邪魔されるのか。
 たぶん人間の技術者がこの場にいたら、オレと同じことをしたはずだ。
 もっとも、人間だったら内蔵プログラムを停止させるにも、色々と面倒な手順を別の機械やコンピュータを使ってしなければならないので、時間がかかりすぎる。
 コンピュータ頭脳のオレだからこそ、即座に対応できたかもしれないのに。

 納得のいかない憤りを抱えながら、残りのフルパワーを使って自分より大きなロボットを肩に担ぐ。
 それを見届けて、グレザックは泣きじゃくる令嬢の背中をとんとんと叩きながら部屋の外へ向かった。オレもその後に続いて一緒に部屋を出る。

 カードキーを差し込んで施錠していると、うつむいたオレの頭をグレザックがクシャッとひと撫でした。
 寡黙な彼なりの労いなのだろう。

 建物の外でロボットを護送班に引き渡し、オレの今回の任務は終了した。

 グレザックが保護した令嬢は班長に案内されて駆けつけた伯爵家の使用人に引き渡される。人間だったら念のため病院に運ぶんだろうけど、彼女はその方がかえってマズいし。

 地面に下ろされた令嬢はオレの足元に駆け寄ってきた。涙に濡れたエメラルドの瞳が、憎しみの色を湛えてオレを睨みあげる。

「あなたのせいよ! 悪いことをしたから一緒に警察に謝りに行くってベレールは私と約束したのに! あなたが無理矢理捕まえたから、ベレールの記憶が消えちゃったじゃないの!」

 そうか、あいつは話せばわかる奴だったのか。だけどそれは、あいつと話をしたこの子にしかわからない事実だ。
 そしてオレがあいつを拘束したことが、消去プログラムを起動するきっかけになったのも事実だろう。
 でも——。

 オレは腰を屈めて令嬢と視線の高さを合わせた。

「ごめん。だけど、悪いことをしたロボットを捕まえるのがオレの仕事なんだ」

 悔しそうに唇をかんで、令嬢はオレを厳しく睨む。

「絶対、あなたを許さないから!」

 捨てぜりふを投げつけて、令嬢はお迎えの使用人と共に帰って行った。

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