異世界で不老不死に転生したのに余命宣告されました


 ふと視線に気付いてそちらを向くと、リズが厳しい表情でオレを見つめていた。
 オレの独り言がなにかまずかったのか?

「なにか知ってる?」

 軽く促してみたら、リズは不服そうにプイッと横を向いた。

「知らないわ。バージュ博士の出生と幼少期の経歴は科学技術局のトップシークレットらしいの。大叔母さんは科学技術局に勤務してたから知ってたけど、部外者の私には最後まで教えてくれなかったし」
「ふーん」

 リズの大叔母は昔科学技術局の副局長だったらしいから、たとえ身内でも局のトップシークレットを漏らすわけにはいかなかっただろう。
 事情は理解していても、大叔母と共にバージュ博士と同居していたリズにしてみれば、自分だけ秘密を共有できていないのは疎外感を覚えるのかもしれない。

「私だけ知らないのは子供心にも不満だったけど、語られることのない出生と幼少期の経歴が、バージュモデルを生み出す原動力になっているとだけ教えてもらったわ」

 天才児もなにかとあったらしい。それだけはオレも理解した。
 バージュモデル誕生の経緯が、連続盗難事件になにか関わりがあるのかどうかは不明だが、とりあえず今は棚に上げておく。
 誕生の過程より、オレは自分の体だというのにバージュモデルそのものをあまり理解していないのだ。そっちの方を先に理解する必要がある。
 オレはネットワークを駆使してバージュモデルの特徴やセールスポイントを検索した。

 バージュモデルはその豊かな感情表現が特徴だが、そのせいで人工知能に与える負荷が膨大になる。それを緩和するため何度か負荷軽減のマイナーチェンジは行われている。だが基本仕様は初期モデル発表時からほとんど変わっていない。
 特に根幹をなす人格形成プログラムは完全なブラックボックスで、ソースコードが非公開となっているため、改変しようにもできないというのが実状だ。

< 67 / 285 >

この作品をシェア

pagetop