28才の初恋
 私の目に映る大樹クンは……どうやら幻覚ではないようだ。
 というか、私が大樹クンを見間違えることだけは何があっても無い!
 きっと砂漠の中で迷彩服を着ていたとしても、それが大樹クンであれば瞬間的に発見する自信がある!!

「あ、先方の担当が不在だったんですよ。後日に伺う約束を電話で取り付けて、皆と合流してランチにしてました」

 ええー!?な、ナゼ私がランチに行かない日にそんな悪い偶然が……!!
 そうと分かっていれば……角煮サンドや妄想を打ち捨ててでも駆けつけたというのに!

 これは……本気でヘコむ。

 だが、私がどれほどヘコもうとも、仕事は無慈悲なくらい正確な時間に始まる。
 『予定していた時間よりも早く、大樹クンの顔を見ていられるようになったじゃないか』、そんな無理矢理に近いポジティプ・シンキングで午後からの仕事をする気力を捻り出した。
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