28才の初恋

「もしもし、お電話代わりました！」

　出来る限り丁寧な口調で。
　相手の気持ちを刺激しないように電話に出る。
　
「もしもし？　瀬戸さん？」

　電話の相手は、小島の言った通り『恒久ハンドショップ』の桃代販売部長だった。
　受話器から聞こえる口調が、普段のものよりもややイラついた感じなのが分かる。
　電話を架けてきた用件が……クレームであることは疑いようもない。

「はい、瀬戸です。今日はどうかされましたか？」

　本来ならば、電話が架かってきているのだからこちらから先に用件を聞くということはタブーである。

　しかし、コトがクレームとなれば話は別だ。
　スムーズに相手がクレーム内容を言えるように、私の方から用件を聞き出す形で問いかけた。