28才の初恋
 女共は一向に大樹クンから離れる様子を見せないし、桃代部長は今にもキレ出しそうだしで……。
 空気はもう重いなんて表現では到底追いつかないくらいに凍り付いてしまっている。

 まあ、私の二メートル先、大樹クンを中心とした半径二メートルほどの円の中は熱気で満ち溢れている模様だが……すでにここからじゃ大樹クンの姿さえ確認できない人だかりになってるじゃないか!!
 その大樹クンを中心とした女の群れ、そのテンションが上がる度に桃代部長の機嫌が悪くなっていくのが手に取るように分かる。

「ちょっと! 早くこっちに女の子を回してよ!!」

 我慢しきれず、ソファに座ったまま店員に怒鳴りつける……と、店員が困り果てた表情でこちらに来て耳打ちしてきた。

「申し訳ありません、店の女の子が全部お客様のお連れさまのところに居るようで……」

……道理で、このテーブル周辺にやたら人口密度が高いわけだ。
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