28才の初恋
 息が切れているし、酸素不足で頭は回らないし。
 約束の時間に遅れてしまった言い訳さえも思いつかない。

「あの……ジョギングですか?」

 う、うん!そうだ、そうだよ!
 ジョギングだ、直前まで全力で走り回っていたことだし……まるっきり嘘というわけでもない。
 大樹クンの言葉にコクコクと頷いてみせる。

 ジョギングだったら、息が切れているのも、ジャージを着ていることも自然だよね!
 と、ともかく大樹クンが帰ってしまうまでに、家に戻ってくることも出来たし。

 後は大樹クンを家に中に招き入れて、二人でお茶を飲めれば万事解決だ。
 ポケットの中を漁って、自宅の鍵を取り出す。
 フラフラのままで鍵を開け、玄関に入る。

「さあ……は、入って……ハァ……ハァ」

 やっと、やっとこのこの瞬間が来た!
 
――大樹クンを招き入れる……この瞬間が!
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