28才の初恋
 フェンスに鍵をかけて、駅前に戻ってきたのは電車の中で考えたおおよその予定通り、みんなと離れてから二時間半も経った頃だった。

 当初の予定通りであれば、この時間帯にはみんな旅館にチェックインを済ませている頃である。

 ここまで来て入れ違いになるのも憚られることだし、みんなの行動を確認するために、責任者の代行を務めてくれている橋本の携帯に連絡を入れる。

『ああ、お着きになりましたか。もう私たちはお先に旅館にチェックインさせてもらってます。課長も観光されたら旅館に来られたらいかがですか?』

 私の予測は当たっていたようで。
 もうみんな温泉に入る準備をしようか、というところだそうで。

――観光……か。

 そんな気分でもないが、そろそろお昼ご飯を食べたいところだ。
 昼ごはんを食べてから合流しようかな。
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