28才の初恋
 二杯目も十七分で完食。
 まあ、腹八分目という言葉もあるし、これくらいで止めておかないと旅館での夕食が食べれないと困る。

 何だか大食いタレントと勘違いされてサインを求められたのだが丁重にお断りして。
 記念品も二回分進呈と言われたのだが、さすがに『乾燥湯葉』を二年分貰ってもきっと食べている途中で飽きるだろう、ということで一年分だけを頂戴した。

 時間も当初の予定である三十分を潰したことだし、いつまでもみんなと離れて行動したところで社員旅行の意味が無くなる。

――まだ、大樹クンと顔を合わせづらいんだけど。

 それでも、腹をくくって旅館へ向かう決意を固める。
 旅館に着いたら、とりあえず温泉に浸かって気持ちを落ち着かせて……それで機会があれば大樹クンに会いに行ってみよう。

 ひょっとすると、避けられているのも私の思い込みかもしれないし……。
< 353 / 518 >

この作品をシェア

pagetop