28才の初恋
 専務は、私が知っている限りでは我が社では一目置かれている存在である。
 現社長はイズミ商事の創始者の息子、つまり二代目である。
 先代の社長は現会長となり、専務はその会長と共にイズミ商事を創設した、いわば影のトップのような存在だ。

 その専務から直々に話をされる。
 あまりに想定外で、まるで話の内容を予測出来ない。

 新規のプロジェクトでも発足させるのだろうか?
 それとも社内で話せないような用件ということは内偵の仕事でもあるのだろうか?
 いずれにせよ、気軽に聞けるような話ではないことだけが予想される。

 専務が用件を切り出すまでの間、テーブルを重苦しいような沈黙が漂う。
 こういった重い空気は嫌いなのだが……自分の上司二人とテーブルを囲んで、それを自分から崩すような根性は私には無い。

 早く話を済ませてくれないものかなあ――そう心の中で思うのが精一杯である。
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