28才の初恋
 そ、そんなことは置いておいて、だ!

 せっかく帰ってきたのだから、一日くらいは実家でノンビリしようと思って、ベッドの上で寝転んで懐かしいBL同人誌をパラパラと捲ってみるのだが……やはり落ち着かない。

――どうしても、転職のことが頭をよぎるのだ。

 実家に戻ることで、頭の中がリフレッシュされるだろう。
 そう思っていたのだが、頭の中はリフレッシュされるどころか――何をしていても思い浮かぶのは転職と大樹クンのことばかり。

 新幹線の窓から見える、山肌の模様でさえも大樹クンの顔に見えるような始末である。
 こんな状態で、ノンビリするも何もあったものではない。

 本当ならば、せっかく帰郷してきたのだから高校や大学時代の友人に連絡を取って遊びに出かけても良いものなのだが……絶対に心から楽しめないだろうという予感に近いものが胸にある。

 転職に対する決断を下さない限り、私には本当の意味での休暇は無いような気分だ。
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