28才の初恋
 大樹クンと出会ったことで、自分の周囲の世界がバラ色に見える。
 恋をするとモノの見え方が変わるなんて話があるが、それは本当の事だったと思える。

 電柱に貼ってある政治家のポスターの顔まで大樹クンに見えたり。
 道端に居る発情期の猫が仲間に見えたり。
 駅前で『アナタの幸せを祈らせてください』とか言っている宗教の人に対しても、逆に『私が幸せを分けてあげようかっ?♪』くらいは言ってあげられるくらいに心に余裕を持てたり。

 毎朝の満員電車もツライことにはツライけど……それでも、これを乗り越えればオフィスで大樹クンに会えると思うだけで、押し潰されそうになる圧力でさえ快感に思える。

 身長が一五五センチと、周囲に比べてアタマ一つ分小さいので苦しいのには違いないが……これも大樹クンに会うため、我慢だ!
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