28才の初恋
――こんなことをしてる場合じゃないんだよね。

 悩みは、同時に私の中に冷静さと、それと同量の寂しさを持ち込んでしまった。
 世の中には、これだけのカップルが存在するというのに……私と言えば。

 大樹クンを好きな気持ちに嘘偽りは一つも無いが、それでも行動を何も起こせず、まるで『恋に恋する』ような状態を楽しんでいるだけだ。
 努力をしていなかったワケではないが……それでも自分が傷つくことを恐れて踏み込んだ行動を何一つ取ってこなかったのだ。

 それで……それなのに、私は自分の仕事と大樹クンへの恋心を天秤にかけようとしているのだ。

 私自身が、自分の気持ちに何の行動も取れていないというのに――悩んだところで何の答えも出るはずも無いのだ。

 この時、私は悟っていた――私は、そろそろこの恋に……一つの決着を着けないといけない時期に来てしまっているのだ、と。
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