28才の初恋
 隣のメタボオジサンが呻き声と共に身を屈めてくれたおかげで、私の周囲に少しだけ隙間ができた。

――このチャンスを逃す私ではないよ!!

 すかさず身体を大樹クンの方にクルっと回転させる。
 次こそは無理のない体勢で大樹クンを鑑賞可能だぜ!!
 これで朝からテンションはクライマックスだぜ!!

「今日から外回りだね、頑張って!」

 隣のオジサンが「うう……内臓が……」と呟きながら土気色の肌になってきたのはひとまず置いておいて……正面に見える大樹クンに激励の言葉を送る。

 大樹クンにほのかな好意を寄せる女として――ではなく、直属の上司としても。
 デキる新人が新たな仕事を始めて、成長していく様を見るのは嬉しいものだ。
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