28才の初恋
 私のツンデレな申し出にも、大樹クンは譲らない。そんな頑固なところも素敵なのだが。
 しかし、スーツを汚してしまったのだ。
 何もしないでは私の気持ちが済まない。

「でも……汚しちゃったんだから、ね?」

 最後の一押しとばかりに、財布を取り出してお金を渡そうとするも、それでも大樹クンは受け取ろうとはしない。

「うーん、本当にいいですって。それじゃあ……」

 私のお金を握った手を押し返しながら、大樹クンが何か考え付いたような表情を見せる。
 手を握られただけでもドキドキものなのだが、何かを閃いた表情が……これまた素敵で、せっかく鼻に詰めておいたティッシュが、再度噴き出した鼻血に押し出された。

――本当に素直な体質だ。
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