鬼上司と私のヒミツの関係
憧れ上司のヒミツ

「誰だ、この書類を作った奴は」


書類でバシッと机を叩き、河野部長の低い声がフロアに響いた。

ヒエッ……とフロア全体が息をのむのが分かる。


みんなそれぞれ顔を見合わせ

『誰だよ、早く名乗り出ろよ』

といった空気に包まれる。



誰だと言わなくてもその書類を作成した人物を部長は分かっているはず。

なのに公開処刑のようなことをする鬼部長。
そこまでしなくてもいいのに、と心の中で文句を垂れる。

ゴクリと唾をのみ、ゆっくりと椅子から立ち上がると、一気にみんなの視線が私に集中する。


ビクビクしながら部長の席に向かって歩き始めると、静まり返ったフロアにヒールの音がコツコツと響く。

いつもは賑やかなフロアなのに、こういう時に限って電話の一本も鳴らないなんて……。

踏み出す足が重くて仕方ない。


部長のデスクの前に立つと、漆黒の瞳が鋭く光り、無言で私を見据える。

小さく深呼吸して口を開く。


「あの、それは私が作りました……」


か細く、今にも消えそうな声しか出ない。


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