セカイカクメイ
第三章



「私達はずっと一緒だよ」
大好き。
無邪気だけど儚く美しい。
君が大好き。


今日も吹雪だ。
暖炉の前で身を寄せ合いながら、私達は外の世界の事を話していた。
「お外はとても賑やかなんだね。私も行ってみたいな…」
双子の妹のビエールイ。
私はクラースヌイ。
東の国では、その二つは幸せの象徴だって、母が言っていた。
「その為にはもっと元気にならなくちゃ。…そろそろ晩御飯の時間だね、行ってくるよ」
私達は人気の無い山奥に住んでいた。何故食べ物も無いような所に住んでいたか、理由は簡単だ。
私達は普通じゃないから。一般論からずれるモノが異質だと認識され、周囲から畏怖の目で見られるのは当然の事だ。
だが、何も食べないで生きて行ける訳もない。ビエールイは体が弱く、街に食べ物を調達しに行けるのは私だけ。私が動かなければならない。
「今日は吹雪だから、無理しなくても良いよ?」
「吹雪なんて平気だよ。いざとなれば“力”を使えばいいでしょ?」
「そうだね。でも、気をつけてね…」
「うん。行ってきます」

外は吹雪で何も見えなかった。
でも問題ない。私は異質だから。
私の中の“何か”に念じる。
-----街まで着きたい-----
そうして目を見開く。目に“力”が集中していると分かる。背から翼が生え、視界が開けていく。風もほとんど感じない。
「………私達の為」
私は飛び立った。

街のそばの林で翼をたたみ、近くに人の気配がないか確認する。以前街で買った商人の令嬢が着るような装いに着替える。そうすれば、食料が手に入りやすいのだ。
そうして街へと駆けていく。建物の脇に降り積もる雪を手に取り、そっと、また私の中の“何か”に念じる。
-----これを金目のものに変えたい-----
すると、その雪は途端に金貨と銀貨に変わる。
食料を売っている店に行き、「父にお使いを頼まれた」と言って食べ物を買う。ここらの人間は少女であろうと女であれば魔女だと疑った。現に私がそういった魔女の噂の中心である魔女と言われる存在なのだが。
食べ物を買い終え、路地裏でしゃがみこむ。ビエールイが食べる、大事な命の源。絶対に粗末に扱えない。
私は街で買った人間の食べ物は食べない。否、食べることができない。何故双子なのに違うのかは分からないけれど、私には人間の食べ物は不味く、人間の生き血は美味しく感じるのだ。
路地裏に食べ物を雪で覆い尽くして隠し、通りへ出る。人間を捕食するとき、目立ってはだめだ。いずれ私達の家に大勢の人間が押し寄せ、ビエールイが殺されてしまう。
少々穢い手口ではあるが、私だって何か体に取り込まなければ力が出ずに朽ち果てるだろう。
「すいません、お兄さん。少しお時間ありましたら------」
それでも私達は、幸せだったんだろう。


つづく
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