帰ってきたライオン
「それで、いつからそんな仲になったんですか? 確か美桜さんて彼氏いましたよね? コアラの国へ行ってる連絡のしてこないどうしようもないのが」
前言撤回。ぜんぜん可愛らしくない。
確かにその通りでぐうの音も出ないんですが、分かりきっていることを声を大にして言わなくてもよろしいのではないかと考えているところに、後ろの大学生の大笑いが重なり、なぜだか笑われている気分になった。
そうなんだよ、全く連絡をしてこない彼氏と言えるのか怪しい奴が私にはいる。
よって、松田氏が居座っているというのはこうなんだろう、よろしくないことをしているんじゃないかという気持ちにもなる。
なってる。
5年。
連絡がないのを彼氏と呼んでいいものか。
自然消滅をしたという範疇に入っているんじゃないか。
世間ではこれは付き合っているとは言わないと、私は思う。
コアラの国もとい、オーストラリアへ行って早5年。
あいつはきっとコアラかカンガルーにでもなって木から木へと飛び回ったに違いない。
きっとそうだ。
そうに違いない。
「美桜さん、くだらないこと考えないでくださいよ。そうやって遠く明後日の方向見て変な笑顔のときの美桜さんて絶対に良からぬことを考えてますから」
「怖いね上田さん。なんかなんでも分かってるみたいだよ」
「一緒に仕事してるんですから当たり前じゃないですか」
さすが、後釜に選んでくれただけあって、言うことははちゃめちゃなんだけど、ちゃんと見てる。
仕事だってすんなり覚えるし、早い。ただ、できるだけ楽に、なんとかやらずに済む方法を考えているだけであって、こなすことはこなす。
そのきれいなブラウンの巻き髪を作っている朝の時間、ばっちりメイクをしているその時間を睡眠に当てて体力を温存したら、仕事ももうちょいやる気がおきると思うんだけど。
と、隣の巻き髪を横目に見た。