放課後は図書室で甘い時間を


***


先生と一緒に学校を出て、駅まで一緒に向かう。

だんだん冬に近づくにつれて、暗くなる時間は早くなる。

今は、もう薄暗くて。
少しだけ、こわいと思った。

……けど、先生がいるから安心、かな…。

そんな事を思ってると、いきなり先生に
手を握られた。


「……なっ何ですかっ!!こ、この手は!!」

「んー?俺の手だけど?…いいじゃん、手繋ごうよ。」

「50メートル離れて歩く約束はどうなったんですかっ…!!」

「言ったでしょ?…嫌な予感するって。」


先生は真剣な顔で私にそう言う。

先生の目は、しっかりと私の目をとらえてる。

…嫌な予感って…何…?

先生は、私の手をしっかりと握ったまま、駅へと歩く。


…手、繋いでる…。
先生の手温かくて、大きい…。



駅のホームに着くと、けっこうな人が電車を待っていた。

私達の乗る電車は、すでに満員で、そこに待ってた人が乗り込む。

隙間なんて出来ないほどの人数で。



…人口密度高すぎっ…。…苦しい。



人の体温で、もわもわするその電車内は
とても暑苦しい。

電車が揺れると、私達も揺れる。
ここで、唯一助かってるのは、お互いで押し合うから、何気なくバランスが保てるという事。



「桜ちゃん。おいで。」



先生が私の手を引っ張ると、電車のドアに追いやった。

私を挟んで、電車のドアに両手をつく先生。


先生は、穏やかな笑顔を私に向ける。


そんな、何気ない先生の仕草にドキドキしちゃう自分がいるんだ…。


「…こうしとけば、桜ちゃん苦しくないでしょ?」


あ…。

先生、分かってたんだ…。人数が多すぎて苦しく思ってる私に気付いてたんだ…。

先生は、優しい…。




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