不器用な君。~自傷少女~

story01*


(01)


今、家を出てきた。原因は親とのケンカ。・・・というより一方的に嫌味を言われる。

こんな家、楽しくないし、辛いしはっきり言って窮屈なだけ。この家の中には居場所など、ない。

親に隠れて切って、傷はそのまま、血は垂れ流し

そんなこと、私にとってはどうでもいい事。いつもの事だし、第一・・・逃げ出したかった。窮屈な箱に無理やり私たち家族が詰め込まれているようで、傷つけあい痛みを感じる事しか出来なくなっていた。

街へ出て、当然行く当てもなくただただ歩き続ける・・・無意味かもしれない。でもただあの場所から抜け出しただけで開放的になる

ぼーっと知らない道を突き進んでいくと、静かな場所へ到着した。明るい街を歩いていたときは全く分からなかったけど、気づいたんだ。

今日は三日月・・・とても綺麗。そして、少し切ない。

このまま空の世界へと導かれたい・・・そんな想像を巡って見つめ続ける。

傍を通る車の音で我に返った。そろそろ帰ろう・・・


もうすぐ月が沈む頃なのか、だいぶ傾いてきている・・・手を伸ばせば届きそう・・・

当然届くはずもなく、星になって月を近くで眺めていたい・・・なんて思ったりもした


再び歩き出す。本当はあんなところへなんか帰りたくない。あそこには居場所なんてないのだから。

だけどあそこがないと私は生活できなくて・・・やっぱり居場所はあそこなのだ。

帰宅しても、一切言葉を交わさずに眠りについた。



朝。昨日の傷もふさがってはいなくても、血は止まっていたので、包帯を巻いて登校した。

「美香!おはよう。」

登校の途中、元気にあいさつしてくれたのは親友の春奈。私の秘密を知っていて、唯一理解してくれている大切な友達。

「おはよ、春奈!」

そして他愛もない話をしながら一緒に通学する。

学校に到着し、話にひと段落したところで春奈がじっとあたしを見つめる

なんだろ・・・?と不思議に思っていると

「美香、かばん置いてちょっと来て?」と言い、言われたとおりにかばんを置き、春奈のところへ行くと、いきなり私の右手を掴んできた。
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