僕らのはなし。①


暫くすると、車が建物の前にとまった。

見てみると…有名なオーケストラのコンサートの会場だった。
しかも、私が行きたがってた高過ぎて買えないチケットの公演…。

「えっ、どうして?」
「俺に分からない事があるとでも??」
そう言って、普通に私の腕を掴んで中に入っていき、通されたのはVIP用の個室。

そこの大きな窓からからコンサートが鑑賞出来るようになってるみたい。

座らされたソファは上質のもののようでかなりふわふわだし、飲み物やお菓子も運ばれてきて至れり尽くせりな感じだった。


暫くすると照明が落ち、舞台にだけついた。
幕が上がると、オーケストラの人達が準備を済ませて、各座席に座っていて、指揮者とピアニストが出てきてお辞儀をすると、演奏が始まった。

ちなみにピアニストは私の講師でもある、実里さん。

演奏が始まると、凄い惹き込まれた。



時間はあっという間で、2時間くらい2人ともほとんど無言で鑑賞してた。

「ほんっとありがとう!
凄い良かった!!
私もいつかオーケストラの人達とご一緒したいなぁ。」
「それがお前の夢なのか??」
「夢…どうだろう??
いつまで続けられるか分からないしね。
でも、そうなったら良いなぁ。」
まださっきまでのコンサートの余韻に浸りながらそう言った。

伊崎は話してる私を笑顔で見ていたけど、私は気づかなかった。



「この後、どうするの??」
「移動する。」
私は解散なのか、まだ一緒に居るのかって意味で聞いたんだけど、そう返ってきてまた車に乗り込んだ。

走行中の車中で、何処に行くのか聞いたけど、また教えてくれなかった。

だけど、今日は機嫌が良いから、分かるまで待ってる事にした。


「着いた。
降りるぞ。」
車が止まるとそう言って、先に降りた伊崎に続いて降り、着いてった。

何か受付を通過すると、更衣室の前で止まった。

「中に着替え用意してあるから、着替えてこい。」
「えっ、何で??」
「良いから。
後でな。」
そう言い終わると、男性用の更衣室に入っていった。
意味も分からず、とりあえず私も着替える為に女性用の更衣室に入ると、ホントに着替えがあった。

某有名スポーツブランドのTシャツとジャージの短パン。

戸惑いながらも着替えるとサイズぴったりで、驚きながらも更衣室から出ると、伊崎が壁にもたれて腕を組んで待っていた。


「とりあえず着替えたけど。
何で私の服のサイズ知ってんの?」
「ある有力な筋からの提供で。
じゃあ行くか。」
「えっ、てかここに何しに来たの??」
「これ。」
ちょっと歩くと直ぐに1つの硝子の扉の前について、立ち止まり壁際に置いてあったラケットを渡された。

硝子の扉から見える室内は壁とちょっと距離を取って平行に一本の白い線だけが引かれてるだけみたい。


「ここで何するの??」
「このボールを壁に順番に打ち込むスポーツ。
スカッシュって知ってるか?」
「まぁ、知っては居るけど…私、運動苦手。」
「でもお前、室内でピアノ漬けだろ?
たまには運動もしないとからだ壊すぞ。
教えてやるから、たまには運動しろ。」
「うっ、分かった。
下手でも笑わないでよね。」
何となく、私の事を考えて連れてきてくれたのは分かったので、伊崎と一緒にやってみる事にした。

結構思うようにボールを打ったりするのが難しくて汗をかいた。




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