僕らのはなし。①
着いたのは、クラブのテラスだった。
特に話す事もないので、どっちも喋らないけど、この人の持つ雰囲気からか、あんまり苦にならない。
視線が合うと微笑むくらいで、特に何も話さずボーッとしていると、急にギターを弾き出した。
優しいんだけど、何処か悲しげなメロディー。
それを聴きながら想うのはやっぱりあの人…結城先輩の事で。
もう全然望みがないし、また会えるかすら分からないのになかなか忘れられない。
彼がまた少し先輩に似た雰囲気の持ち主だからそう思ってしまうのかな??
物思いに浸っていると、演奏はいつの間にか終わってたみたいで…私は想いを仕舞い込もうと水を飲もうとしたけど、もうなかった。
「飲む??」
そう言って、水が入った透明なグラスを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
素直に受け取り、お礼を言う。
「何考えてたの?
凄い切なそうな顔してたけど。」
「別に。
大した事じゃないです。」
「そうかな?
まぁ…知り合ったばっかりの俺に言うのも違うか。
もう一曲聴いてくれる?」
「はい。」
名前も知らない彼は、特に嫌な顔1つ見せず、また別の曲を弾き出した。
聴いてると、急に目眩がして意識を保っていられず…気が遠退いた。