詐欺師の恋
嘘と本当の見分け方
金曜の夜。



真冬に比べれば気温は段々と上がってきたとはいえ、会社の外に出るとまだ寒かった。



憲子は裕ちゃんと話し合う!とかなんとかで、定時に出て行った。そんな憲子に、私はささやかにエールを送った。




「さむ…」



どうか、上手く行きますように。と祈りながら、駅までの道のりをひとり、とぼとぼと歩く。


そんな私とは反対に、歩道には、これから飲みに行こうとするサラリーマン達が溢れている。





社内の噂は相変わらずで、藤代くんと一緒の所を見られたりすると、事態は更に悪化していく。




―私って、そんなに悪い女なのかな。



いつも中途半端な恋愛をしていた頃は、傷つかないフリが上手だったけど、中堀さんのこととなると、私は滅法弱かった。



もういっそのこと、皆私のことなんか放っておいてくれないかな。



そう思っていた矢先。


クラクションの音がして、反射的に道路に目をやった。




「あ…」




見ると、白いスポーツカーがハザードを出して停車している。




―確かこの車は。




思い当たった所で、当事者が降りて来た。





「…藤代くん……」




「良かった、間に合って。」






藤代くんは戸惑う私の前に立ってにこりと笑った。
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