花椿
花、燃ゆる
数日後。
漣は再び、男を尋ねた。


「おや!? あんたは一昨日、澤木さんを訪ねてきなさった……」


男の隣に住む家主が、庭木の手入れをしながら漣を呼び止めた。


「実はね……澤木さんは、あのあと……」


「亡くなられたのですね」

漣は涼やかに言う。


「僕は彼に、もしもの事があったら引き取る約束をした物を頂きに来たんです」


眉一つも動かさずに漣は言う。


「はぁ」


家主は唖然と漣を見て、
「ちょうどよかった」と告げ、一呼吸し男の家へと案内をした。


「警察の調べが済んだんで部屋を片付けようと思っていたんだ。ったく、とんだ人に間借りを許したもんだよ。部屋は、そのままだから、まだ血痕も……」


「かまいませんよ」

漣は穏やかに微笑む。


「彼の本や持ち物は大方、警察が参考にと持っていったから、大したものは残っていなかったと思うが」

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