モノクロ 〜真実の剣と偽りの盾〜

14:10

友花side


今は、夏休みの意気込みを作文用紙に書かせられているところだ。

いつもなら、午後の授業なんてかったるくてやってられない、と寝ている人たちも、今回ばかりは寝ていられない。
なぜなら、授業が始まる前に、「授業が終わるまでに提出出来なかった奴は、作文も夏休みの課題に入れる」と、担任にうんと脅されたからだ。

課題がこれ以上増えるのは嫌。でもわたしは、楓ちゃんの事と、新しく入ってきた転入生の事で頭がいっぱいだった。


楓ちゃんは本当に腹痛かどうかは分からないけど、ひとまず待つことにした。
いつまで待ち続けるのかは分からないが…。

お見舞いに来たよ、などと理由をつけわざわざ謝りに行って、何か思われるのも嫌だ。これ以上、関係を崩したくない。

余計なことをする必要はない。ただ、待つだけ。


それにしても、あの転入生はなんなのだろう。教室に入ってから今まで、一度も声を発していない。
隣の席の類くんに話しかけられても、全て首を振って答えている。

声が出せない、もしくは変なのだろうか。まあわたしも人のことを言えたものではないが。

それとも、名前のせいで迫害されるのを恐れている?
この教室はなんというか、雰囲気でそういうにおいを漂わせている。


どちらにしろ、彼女は目立たないためにも押し黙っているのは確かだ。でも、その静かな雰囲気が逆に彼女を浮かせてしまっている。

この教室は一人一人が大きな声を出しているので、静かな空間はとても目立つ。
クラスメイトは皆、このことを理解しているが、新入りはこのことを知らない。

今日は葵さんの前の席の楓ちゃんが休みだし、なおさらに静かだ。
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