奥様のお仕事
祖父は一か月に一度 島を出た。


「仕事の商談」

「定期健診」

「野暮用」


この島の病院では なかなか補えないから

「年はとりたくねーな」
祖父が悲しく微笑むのが 胸をつく。


祖父がいなくなったら 私どうしたらいいんだろう。
確かに島の人たちは いい人ばかりだけど
稼ぎもない私を 養ってくれる人なんかはいないし
観光施設もない 小さな島では 働くところもない。


祖父に何かあった時は
それは 私がここを出る時


どうかそれがずっとずっと後でありますように


「ただいま」

祖父がいつものように 戻ってきた。


「おかえり」

私のたった一人の家族
年々年老いて行く姿が 最近とても不安で
押しつぶされそうになる。
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