西森さんと瑠愛くん。(仮)

~止まない欠伸。

 
「ふぁ~……あ」

「………31回目」

 保健医が何度も欠伸をするので、カウントして教えてやった。

「おや…そんなにしてました?」

「してる。すっごい気になるんだけど」

「すみませんねぇ。珈琲飲んでるんですけど、効かなくて……ふぁ~……」

 そう言って、保健医は噛み殺す素振りも見せず、32回目の欠伸を宙に放つ。

 普段より何割増しかでふにゃふにゃの保健医の顔を見ていたら、うつった欠伸を我慢するのがどうでも良くなってきた。

 口の前に手を置いて、私も眠気を吐き出した。



 永峯 瑠愛との“約束”から、2週間と少し。

 一日の中で最も騒々しいハズの昼休みが、めっきり平和になっていた。



 彼が何をどう言ったのかはわからないが、『護り隊』の一回デート権をめぐるランチタイム戦争が、一時休戦状態になっている。

 安寧を取り戻したお昼時。

 ・・・どうやらあのチワワは、本気で私との約束を守ろうとしているようだ。
 
< 27 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop