西森さんと瑠愛くん。(仮)
 

 そうこうしている内に、電車は都会のビル群を抜け、開けた景色の中に、海が見えていた。

 水面が太陽の光を反射して、キラキラと輝いている。


「もうすぐ着くね」

 そう言って、永峯君は座席の上の網棚から、クーラーバッグを下ろしてくれた。

「西森さんのお弁当、スゴい楽しみ」

「大したものは入ってないけど…」

 彼の耳に私の言葉が届いたのかそうでないのか、ついには「お弁当の歌」まで歌い出す。

 そんなに喜ばれても、逆にプレッシャーなんだけど・・・。

「お弁当持って出掛けるとか、いつ以来だろう」


 芽吹ちゃんも高校に上がり忙しくなり、お姉さんも家を出てしまい、全員で揃う事が難しくなってしまって。

 昔はよく、母さんがお弁当作ってくれて、みんなで海に行ったんだ。


 もう遠い昔の事のように、永峯君は目を細めている。
 
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