西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 ホッとしたような顔になって、芽吹ちゃんはわずかに微笑んだ。

 そして二人、黙ってケーキを口に運ぶ。


 ・・・甘え下手な末っ子は、とても人見知りらしい。

 言葉や態度は不器用だが、決して私を嫌っているのではないと、永峯君は教えてくれた。


「……………桃香さんは、愛兄の彼女?」

 最後に残ったイチゴをフォークに刺して運ぼうとした時、芽吹ちゃんが控えめに呟いた。

「りゃにたっ?」

 自分でも良くわからない単語を発していた。フォークからイチゴが逃げて行く。

「………月姉の時も、そうだった」

 逃げたイチゴを捕まえて、銀紙の上に戻しながら、芽吹ちゃんは続ける。

「あのね。家に、家族以外の人が来るの、その、滅多に無くて……月姉は、結婚したい人って、連れて来た……」

 探るように、一つ一つ選びながら、話しているのがわかった。

 私は首を横に振る。
 
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