西森さんと瑠愛くん。(仮)

　
｢………今日は、本当に楽しかったよ｣

　上を向いたままの永峯君の声がして、その横顔に視線を移す。

｢俺のわがままに付き合わせちゃったけど……西森さんは、楽しかった？｣

｢……楽しかったわ｣

　マフラーを少し下げて、今度はハッキリと告げた。

｢ホントに？｣

｢ホントよ。誰かと出かけるなんて、とても久しぶりだったし…｣

　無意識にそう口に出してしまって、すぐにまずい、と思った。

　あ…という顔をして、永峯君は私を見る。

｢………俺のせい？｣

　・・・一瞬、その言葉の意味がわからず、考える。

　しかし、私がまずいと思った事とそれが無関係であることに思い至り、首を横に振った。

｢違うわ。何て言うか…友達がいないのは、今に始まった事じゃない、って言うか…｣

　人付き合いが苦手なのよね、と続けると、彼は納得したようだった。