この気持ちをあなたに伝えたい
小学生の頃の春
 小学生の頃に少女は両親と共にマンションへ引っ越した。周辺には医療施設が揃っていて、お洒落な店や飲食店などもたくさんあるので、人々の憩いの場となっている。日当たりの良さやマンションから駅が近いこと、開放感があるところも大きな魅力。
 そのマンションに昔から下の階に住んでいる少年と出会ったのは春の季節。
 少女が一人で散歩をしていた帰りに派手に転んで怪我をして、痛みに堪えきれず、泣きながらハンカチを出そうとしたときに背後から彼に声をかけられた。

「どうしたの? 大丈夫?」
「っ!」

 中学校の制服を着ている知らない少年の声を聞いて、少女は声を出すことができなかった。

「そんなところに座っていると汚れるよ?」
「あ・・・・・・」
「あっ!」

 後ろを向くと、中学校の制服を着た少年が最愛の泣き顔を見て驚いている。その後に足の傷を見て、すぐに状況を理解した。
 少年にじっと見られていて、最愛は居心地が悪かった。

「怪我しちゃったんだ。痛そうだね・・・・・・」
「痛い・・・・・・」

 少女が立ち上がろうとすると、足元がふらつき、また転びそうになった。

「無理しないで。痛むよね?」
「でも・・・・・・」

 もう一度立ち上がろうとするので、少年はそれを止めた。

「血が出ているね・・・・・・」
「うん、出ている・・・・・・」

 少年は少女の足から流れる血を見て、顔を顰める。

「家の人はいる?」
「ううん・・・・・・」

 タイミング悪く、最愛の両親は家の中にいなかった。

「いないの・・・・・・」

 少女が出かけていることを伝えると、続けて質問をされる。
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