この気持ちをあなたに伝えたい
伝えることができた
「これが私の高校生活だ・・・・・・」
「最愛・・・・・・」
「もう帰るな。遅いから・・・・・・」

 鞄を片手に持って帰ろうとすると、礼雅が追いかけてきた。
 小さな手に触れたとき、最愛は思わず振り払ってしまい、礼雅の顔面に最愛の手が直撃してしまった。

「ごめっ! お、おやすみ・・・・・・」
「待て! 最愛!」

 靴を履いて最愛との距離を縮めようとする礼雅から逃げて、最愛はマンションを出て、近くの店に身を隠した。
 最愛が礼雅の家へ行くのはあの日が最後だった。
 メールも電話も最愛から一度もしていない。家にはほとんどいなくて、どこかへ出かけるようになった。
 今日も外出していて、書店の中にいる。特別に欲しい本はなく、ただ時間を潰す目的のためだけに店内を歩き回って本を読んでいる。
 自分の過去の話を聞いて、礼雅が何を思ったのか、知りたくなくて、顔を見るのが恐ろしくて、また礼雅から遠ざかるようになった。
 ストーカーのときとは違う恐怖を感じながら、会いたい気持ちも強く、糸のように絡み合っている。
 専門書から文芸書のところへ行くために読んでいた本を本棚に入れようとしたときに本を落としてしまった。床に本がぶつかる前に二十代くらいの若い男が本をキャッチして、そのまま本を入れてくれた。 

「ありがとうございます」
「気をつけてね」

 彼に頭を下げ、文芸書のところまで歩くと、携帯電話が鳴り、急いで携帯電話を取り出した。メールを送ってきたのは美鈴だった。
 内容は最愛の体調の心配と過去についてだった。文章を書いて送信すると、今度は電話の着信音が鳴った。

『どういう意味!? これ!』
「そのままの意味だ」
『何が!?』

 文面には礼雅に高校生の頃の話をしたこと、礼雅から距離を置いていることを書いていた。

『どうして?』
「そうすることが正しいからな・・・・・・」
『・・・・・・とにかく直接会って話そう』
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