この気持ちをあなたに伝えたい
 礼雅が服に指を引っかけて小さな声で言ったことに最愛は疑問を抱いて、ベッドから飛び退いて鏡で確認すると、紅い印がたくさんあって目を見開いた。手で拭おうとしても、どこの印も消えることはなかった。
 完全に意味を勘違いしていた。肌につけられた印のことを言っていたのだ。最愛はそのことを正しく理解した。

「きつめに吸ったからしばらくは消えないな」
「やってくれたな・・・・・・」

 これでどうやって大学へ行けばいいのだろうかわからず、最愛は困った。
 礼雅に偉そうに言われたくなかった。手首にも印がつけられたので、隠しようがなかった。

「あのさ、毒舌を加えて性格の悪さも隠していたのか? 二重人格なのか?」
「こうすると何かと都合がいいからな。これから二人でいるときはこっちの俺でいることにする」

 めんどくさそうに言う彼に爆弾を投げた。

「じゃあ、改めてよろしくな。色魔」
「何だって?」
「だから色魔・・・・・・」

 さっきよりはっきりと大きな声を出すと、機嫌は悪くなった。呼ばれた本人の顔がかなり引きつっている。

「そんな呼び方はないだろ?」

 少し前の最愛だったら、そんな呼び方をしなかった。

「私のことをここまでしたんだ。それくらいの報復はしても文句は言わせない」
「ふざけたことを言いやがって。さっきのストーカーについて詳しく聞かせろ。その前にお茶を一杯頼む」

 自分のペースを人にまで押しつけてくる態度に立腹した。
 二人分のお茶をすぐに淹れた。それをを飲んで落ち着きを取り戻しながら、今でも自分を苦しめる男について話した。
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