恋愛の神様


「はい?」


チェーンを掛けたまま戸の隙間から覗くと草賀さんが立っております。


「……どうかなさったんですか?」

「…どうかって、オマエこそ……いや、イイ。とりあえずココ開けろ。」


怒っているわけではないですが、日頃ワタクシをからかうニヤニヤ笑いには欠けていて―――その辺りを見るにあまり愉快ではないようです。

ワタクシは草賀さんの突然の出現に戸惑いつつも、言われた通りチェーンを外そうと扉を引きました。

ですが、締め切る前にガシッと外から取り押さえられ、閉めるも開けるもままならない状態です。


「手を放して頂かないと、チェーンが外せませんが……?」

「……いや。ちゃんと開ける気あんだろーな。そのまま閉めんなよ?」

「何をバカな事を」


せっかく訪ねてくれた客を追い返す程ワタクシは失礼ではありませんヨ。

おかしな駄目だしに首を傾げつつ、ワタクシはチェーンを外し、草賀さんを中に招き入れました。


「どうぞ。」


草賀さんと違って、しがないOLの1LDKです。

部屋の壁沿いにあるベッドをソファー代わりに草賀さんが腰を下ろします。

ワタクシはローテーブルの脇に腰を下ろしました。

草賀さんは腕を組み無言でワタクシを眺めております。

ベッドの上から視線を受けつつ座っていたワタクシは、突如はっとしました。


「そう、…だ。お茶淹れなきゃいけませんね。」


ワタクシはお客様がいらっしゃったのに何を呑気にぼへっと座っているんでしょう。

なんだかとことんヌケてます。


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