恋愛の神様


「し、仕度出来ました!」


ワタクシはそう叫んで玄関へ戻りました。

その最中に、こほっと小さく咳払いして喉の調子を確かめます。


あー、あー本日は晴天なり………よしっ!


気合いを入れて玄関に飛び出しました。


「うを、ヲカエリナサぁイ、ア・ナ・タ。ゴハンにスル?オフロにスル?ソレトモ、ア・タ・シ?」


くぅ……あれほど練習したのに噛んでしまいました。

それまで所在なげに佇んでいた草賀さんは、ワタクシを見詰め目を剥きました。

眠気も一気に吹っ飛んだようです。

そうでしょうとも。

現在のワタクシは新妻の定番コスとも言われる裸エプロンなのですから!

白いフリフリのエプロンは総菜を買ったついでに隣のB級衣料品店で購入した代物です。

草賀さんは発作のようにブハッと噴き出しました。


「マヂかよっ!?は、裸エプロンしたヤツなんざ、は、ハジメテ見た!!ウケル―――――!!」


よし!!

ワタクシは床をのたうちまわって大笑いする草賀さんに快心のガッツポーズです。

何もお返し出来ないワタクシですけど、せめてちょっとしたエンターティメントで、お疲れを吹き飛ばしてあげましょうとも。

そのために身体をはるのを惜しみませんヨ?

……しかし、草賀さん、少々笑い過ぎなのでは?

草賀さんは笑い過ぎて噎せ返り、それでも笑っています。
涙も滲み、笑い過ぎて既に虫の息です。

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