恋愛の神様

     草賀零於



※※※reo kusaga※※※



――― 頭ン中が真っ白になるってのはこういうことを言うんだろうな。



野山が部屋を飛び出して行くのを俺は茫然と見詰めていた。

そうそう下手打つ事もねぇけど、仕事でミスしたとしても気付くと同時に挽回策に頭を切り替える。
茫然とする事なんて殆どないが…。

適当な言い訳一つ出来ずに、見送っていた。

俺は一体何に対してこんなにショックを受けてるんだろうか……?

バタン―――と、扉の締まる音にようやく覚醒した。


「チィちゃん………っ!」


後を追いかけようと踵を返す。

その背中に悲鳴のような声が追いかけてきた。


「行かないでっ……レオ!」


背中に亜子がしがみ付く。


「お願い、アナタまで行かないで」


闇の中に一人取り残された子供のように心許ない声。

こんな風に、誰でもない俺に縋りついてくる事を俺はどれだけ切望していただろうか。


だけど―――嬉しいと手放しで喜ぶ事が出来なかった。


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