恋愛の神様

タツキは今まで出会った誰よりもシツコクて、口煩くて、偉そうだった。

そして素直じゃないんだ。

僕がいなくなると直ぐに探しに来る。

例によって僕に悪気はなくついうっかりしたものだから、駆けつけたタツキを見るとさすがに良心が咎める。
泣きそうな必死な顔してるから。

『ゴメン。心配させた……』心からそう謝るのに『心配したわけじゃないわよっ!仕事をさぼられたら困るのよ!』と怒る。

ひょっとしたら僕よりずっとピーの事を大切にしてるんじゃないかという構いっぷりなのに、それを口にすると『アンタの鳥だから仕方なく世話してんのよ!』と怒る。

別にさ、悪い事じゃないんだからごまかさなくてもイイと思うんだけど…
その辺りのタツキの感覚は未だに解らない。


タツキはさ、僕がピーを大切にしてるって思ってるけど、心の中ではいつか殺すかもしれないなんて思ってるなんて、知らないんだよね。

知ったら、どう思うかな……。

僕から逃げようとするなら……逃げられないように僕の手の中で捻り潰す。

アノ人みたいに離れていかないように。
僕を独りぼっちにしないように。

でも、タツキは、ピーじゃないものね。

僕が言う事を聞いて歌を歌って『トップスター』でいる間は傍にいる。

分かり易いのはありがたいケド、いつか離れるって知っているのは中々複雑だね。

あの娘はピーじゃない。

タツキはずっと一緒にいてくれない。

でも仕方ないね。

僕はずっと一緒にいてくれるピーがいてくれればいいんだ。


ピーは死んでも、消えても必ず戻ってくる。

母さんがピーになって戻ってきたように。

< 251 / 353 >

この作品をシェア

pagetop